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パーフェクト・ワールド・エンド18-2
今なら、少しはわかるような気もするけれど、当時はなにもわかっていなかった。
子どもだったのだ、と思う。成瀬に言われたにも関わらず、榛名のこともそういう意味できちんと気にかけてやれていなかった。自分のことに精一杯で今よりもずっと視野が狭かった。
それでも、あのころは平和だった。いつだったか、茅野や成瀬が言っていたような「平和の園」だった。皓太たちが入学したころの陵学園中等部は、彼らの手によって守られていた。
「幼馴染みなんだって? その、成瀬さんと」
「ああ」
珍しく自分から話しかけてきたと思ったら、成瀬のことを知りたかったらしい。動機はどうであれ、寮室にいてもリラックスするどころかツンツンと警戒心を張り巡らしているいつもの姿よりはずっとマシだったので、皓太は笑顔で頷いた。「うん、そうだけど」
――そこまで警戒しなくてもいいと思うんだけどなぁ。
そりゃ、このご時世、男でも男に襲われることはあるだろうけれど。皓太はアルファだが、自分を異性愛者だと思っていた。恋愛をする相手に選ぶのはアルファであれベータであれオメガであれ、女性。そちらの性のほうが重要で、オメガ性の男性は対象ではない。
そういうタイプのアルファは珍しいだろうから、もしかすると榛名は自分がベータでもそういう目で皓太が見てくることもあると思っているのかもしれない。
――入学早々にアルファの生徒にそういう意味で絡まれて、相当へこんでたみたいだし。
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