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パーフェクト・ワールド・エンド18-4

 ――祥くんは違うな。家の力を使ってまでどうのこうのってタイプではないし、だとしたらタイミング的にも向原さんだとは思うけど。  でもなぁ、と内心で皓太は首を捻った。  あの人ならできるだろうけれど、あの人がやる意味があるような事案だったのだろうか。  すっきりとした顔で参考書を開いている同室者をちらりと見やって、あるわけがないなと浮かびかけた疑問を一蹴する。あの人が親しくもない一年のために権力を行使するとも思えないし、この寮の治安を維持しようだとかそういった全体的なことを考えているとも思えない。  悪い人じゃないけど、やられたやつが弱かったのが悪いのだと平然と言い放つ姿のほうが圧倒的に想像に易い。そもそもあの人が親身になるのなんて――。 「なぁ、榛名」 「なんだよ」  きょとんとした瞳を向けられて、皓太は「あー……」と小さく唸った。「悪い、なんでもない」 「なんだよ、それ。用もないなら呼ぶなよ」  不満を隠しもしないまま榛名が吐き捨てる。先ほど見せた険の無さはどこに消えたんだと思ったが、「ごめん」と皓太は繰り返した。  思考そのままに尋ねてしまいそうになったが、あのとき本当になにもなかったのか、なんてデリカシーの欠片もないことはさすがに聞けない。  と言っても、成瀬に聞いても向原に聞いても答えてはくれないだろう。

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