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パーフェクト・ワールド・エンド18-6
「た、高藤、高藤」
妙に浮足立った声に呼ばれて、皓太は教室の入り口に目を向けた。そこにいたのは二年生のフロア長だった。なんでこんなところにと訝しみながら、皓太は近づいて頭を下げた。
「お疲れさまです。なにか緊急の連絡でもありましたか?」
昼休み中の教室は適度に騒めいていて、自分たちに意識を向けているクラスメイトはあまりいない。そのはずなのに、その上級生は周囲を気にするようにして廊下の端に皓太を呼び寄せた。
嫌な予感を裏打ちするように、彼が「さすがにまだ一年の棟には伝わってないか」と言う。
「一年の棟にはって、なにかあったんですか?」
「ちょっとな。三年のところで」
「三年生?」
無意識に皓太の声量も下がった。苦笑いで頷いて先輩が続ける。
「隠しててもそのうち伝わるだろうから、中途半端な情報が拡散する前に寮生委員で共有しとけって、茅野先輩が」
ということは、うちの寮の人間が関係しているらしい。おまけに茅野からこうして寮生委員に伝達が入るということは。
思い浮かんだ顔はひとつだった。もしかして、という疑念をくみ取ったように、先輩が頷いた。
「向原先輩と本尾先輩」
やっぱりなと言う代わりに、神妙な顔で皓太も相槌を打ってみせた。本当に水と油なんだなと思いながら。
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