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パーフェクト・ワールド・レイン0-1

[パーフェクト・ワールド・レイン]  約束をしたことがある。秘密の、と囁き合ったそれは、約束と言うより、呪縛に近かったかもしれないけれど。 「何を考えているのかしら、あなたは」  映画の撮影中だから忙しいのよ、から始まった母親の電話の、取り留めもない会話の最後はそれだった。芝居がかった呆れ声に、現場の人間の心労が眼に浮かぶ。きっと、荒れることだろう、この通話が終わったなら、また。 「何がですか?」 「わざわざ私に言わせたいのかしら。あのふざけた写真に決まっているじゃない。璃子さんのお子さんですかって見せられたのよ。ぞっとしたわ」 「まるであなたみたいで?」 「ふざけないで」  怒りを押し殺したのが知れて、成瀬は笑った。勿論、内心でだけだ。会話を長引かせたところで、良いことは何もない。 「分かっているとは思うけれど、あなたはアルファなの。女でも、ましてやオメガでもないのだから、男を誘うような馬鹿な真似はしないでちょうだい」  口早に告げられたそれに、結局そこか、と匙を投げたくなった。アルファであれ、と散々子どもに植え付けたのは自分であるくせに、自分が一番、信用していない。どれだけ誤魔化したところで、オメガでしかないと思っている。  だったら、いっそのこと、もっと早い段階で諦めてくれたら良かったのに。との嫌味は呑み込んで、「分かってる」と言い切った。

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