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パーフェクト・ワールド・レイン0-2

「俺はアルファですよ。あなたが望んだとおりの」  紛い物ではあるかもしれないが、それでも、――少なくとも、この学園にいる間の自分はアルファだ。  それなら良いのよ、と、捨て台詞染みた言葉を最後に切れた携帯電話を一瞥して、電源を落とす。しばらくはかかってこないはずだから問題ない。 「相変わらずみたいだな」 「あの人は、アルファの母親として振舞い続けたいだけだから」  こうやって思い出したように連絡を寄こすことも、掲載誌を送り付けてくることも、そうだ、と成瀬は思っているし、実際、「そう」だ。  呆れた声を隠さない向原に、小さく笑う。積極的に聞かれたい話ではなかったが、そう言う意味でも、これも今更だ。 「それにしても、一応、外部撮影も持ち出しも禁止って茅野も徹底してくれてたと思うんだけど。どこから流れたんだろ」 「無理があるだろ、全部を全部、徹底って言うこと自体が」  おまえも言った通り、「一応」ってことだろ、と。こともなげに言って、向原が顔を上げた。色素の薄い瞳がゆっくりと笑む。 「潰してやろうか、俺が」  いつだったか、おまえは傲慢だと眉をしかめていた篠原の言を思い出した。追い出したいわけではないと応じたのは本心だ。やらないのではない。出来ないからだ。  ただ、出来る人間もいる。こうして、いとも簡単に。  それが、写真を流出させた誰かなのか。流失の事実なのか。それとも、春になってからの悩みの種なのかは知らないが、どれでも一緒だ。

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