476 / 1144

パーフェクト・ワールド・エンド19-1

[19]  甘い、匂いがする。大嫌いなオメガの、甘い香り。  鼻に付いた匂いに、向原は目を眇めた。無作為にアルファを誘うフェロモンは、着色料まみれの菓子に似ている。  胸焼けを起こしそうな甘ったるい香りが、昔から嫌いだった。  そのせいか、自分はオメガを嗅ぎ分ける能力が格段に高かった――らしい、ということをこの学園に入って知った。  ベータのみならずアルファまでもが、オメガの男を「あいつはアルファ」だと言う。  それを聞いたときは馬鹿じゃないのかと呆れたが、それだけだった。どうでもよかったからだ。  どうでもいいままでいたほうが、よかったんだろうけどな。うんざりとしたものを覚えながらも、向原は足を止めた。視線を向ける。  近づいてくるのは、よく知る匂いだった。

ともだちにシェアしよう!