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パーフェクト・ワールド・エンド19-3
「おまえが」
視線は一度も合わなかった。
「……おまえがいないところだったら、どこでもいい」
半ば分かっていた答えだったのに、聞いた瞬間、掴む指先に力がこもった。前髪の隙間から垣間見えた表情は、能面のように変わらない。
最後の意地だとでも言わんばかりに、表情同様抑えた声が繰り返す。
「だから、離せって」
「成瀬」
「関係ねぇだろ、おまえには」
あまりと言えばあまりの返答に、失笑が漏れた。本当に、腹が立つほど変わらない。昔のままであるはずがないのに、変化を認めようとしない。
「成瀬」
もう一度呼びかけると、億劫そうに成瀬が顔を上げた。乱れたところのひとつもない、いつもどおりの生徒会長の姿。
頭の天辺から足の爪先まで検分するように視線を滑らせて、そっと息を吐く。
「来い」
あからさまな命令調に、人形のようだった顔に険が走る。
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