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パーフェクト・ワールド・エンド19-4
「担ぎ上げられたくなかったら、着いてこいって言ってんだよ」
それとも、と向原は周囲を見渡した。授業中だと言っても、外に人がいないわけではない。
「ここで揉めたいのか」
「離せ」
感情を抑えなおした声で言い放つなり、また成瀬が視線を外した。
「わかったから」
引く意思がないことを悟ったのか、強張っていた腕から力が抜ける。けれど、離してやる気にはなれなかった。そのまま寮のほうに向かって、向原は歩き出した。
心底忌々しそうな舌打ちがひとつ聞こえたが、それ以上はなかった。ここで目立つのは得策ではないと判断しただけではあるだろうが。
たいした距離もない校舎から寮までの距離をここまで遠いと思ったのははじめてだった。その道中、誰ともすれ違わなかったことは幸運ではあったとは思うが。
――悪運って言うほうが正しいかもしれないけどな、こいつの場合。
寮の階段を上って、自室のドアを閉めたところで、向原は掴んでいた手を離した。
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