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パーフェクト・ワールド・エンド19-5
「成瀬」
「おまえの勝ちだったな、結局」
呼びかけの返答には到底なっていないようなことを平然と告げて、成瀬が小さく笑った。背を預けるようにドアにもたれかかってはいたが、表情も声音もいつもどおりを取り繕いなおしていた。
「勝ち?」
静かに聞き返せば、「わかってるだろ」となんでもないことのように言う。
「案の定だったってだけの話だ」
「それで?」
滲んだ自嘲を無視して、向原は問い重ねた。
「おまえの言うとおり、俺が勝ったんだとして、そうしたらおまえは俺になにしてくれるって?」
そんな取り決めをした覚えはいっさいなかった。
成瀬の言ったとおりで、自分が飽きたらその時点で終わる。それだけのゲームだったからだ。
そのただの暇つぶしのゲームが、なんでこれほどの長期間続いたのか、その理由も間違いなく成瀬は知っている。
「冗談だろ」
じっと向原を見つめていた瞳が、ふっと笑んだ。
「これ以上おまえに縋るくらいなら死んでやる」
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