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パーフェクト・ワールド・エンド19-6

 空々しいほどにあっさりと成瀬は言い放った。ほかの誰かが似たようなことを言えば「そんなことは言うものじゃない」と聖人ぶった顔で諫めてみせるだろうに。  そんな片鱗なんて微塵も覗かせないまま、ただの事実を告げるようにして言い募る。 「おまえはわかるよな。これが冗談でも脅しでもなんでもないって。俺が俺のことを心底どうでもいいって思ってることも知ってるよな」 「……」 「わかるだろ、おまえだったら」  ふと脳裏をよぎったのは、もう何年も前の記憶だった。自分の感情をまだまともに処理できていたころの記憶。  もう少しくらいだったら付き合ってやれる。そう言い聞かせることでやり過ごせていたころの話。  ――おまえが、俺になにかするわけないだろ。  そう、成瀬は平然と笑ってみせた。「親友」だと、「対等」だと、そう。  本当に最悪だなと呆れた。この男はいつもそうだ。そうやって、そうやって――。  思っていたよりも、自分はらしくもない我慢をしていたらしい。そのことをはじめて自覚したのが、この瞬間だった。  この男の言うところの「親友」の顔を壊してやりたいと思ったのも。 「なぁ」  自分でも意外なほど、呼びかけた声は平淡だった。 「おまえ、なんだかんだ言って、高括ってるよな」

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