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パーフェクト・ワールド・エンド19-7
「高?」
「俺がなにもしないって」
怪訝な色を覗かせた瞳を見つめたまま、向原は薄く笑った。
「なぁ、成瀬」
それとも本当に、自分がなにもしないと思っていたのだろうか。だから、のこのこと密室でふたりきりになる状況を許したのだろうか。
昔から向原は、その自暴自棄ともとれるような危機感のなさが気にくわなかった。
――いまさらだけどな、ぜんぶ。
そう、いまさらだ。どうにもならないし、どうにかしようという気も起きない。
「対等って言うのは、こういうことだろ?」
普段とは比べものにならないくらい、腕を取っても反応は鈍かった。本当に、オメガというものはろくでもない。
馬鹿みたいに簡単にベッドに沈んだ身体を組み伏せて、囁く。
「俺に手加減されたくも、庇われたくもないってことだよな」
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