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パーフェクト・ワールド・エンド19-8
そうだと言うなら、自分でどうとでもすればいいし、そうでないのなら、二度と言わなければいい。
それだけのことだ。力づくで押さえ込んだまま、向原は駄目押した。
「違うか?」
抜け出せないと悟ったのか、暴れるのをやめて成瀬が睨む。ひさしぶりに見たな、と思った。その、あからさまな敵意が浮かんだ瞳。
「大っ嫌いだ」
言葉どおりの、心底憎いと思っているような声だった。
「大嫌いだ、アルファなんて」
「だろうな」
ふっと笑みが零れた。
「アルファだったらよかったのにな、おまえも」
逆鱗に触れるだろうなとわかっていて言ったが、本音でもあった。そうでさえあれば、ここまで面倒なことにはならなかったはずだ。
「おまえに、なにがわかる」
つい数分前に聞いたのと真逆の台詞だった。わかるわけがない。けれど。
「わからないだろ、おまえにも」
「……え?」
「いいけどな、べつに」
もう、いまさらだ。本心で向原はそう言った。
「俺の勝ち、なんだろ?」
だったら諦めろよ。受け入れろよ。そんなことをこの男がするはずがないとわかっていたが、やめてやる気には、やはりなれなかった。
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