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パーフェクト・ワールド・レイン0-5

「おまえさ、どうするの」  不意にまた紡がれたそれに、意外だとの声を呑んで聞き返す。 「どうするって、なにが」 「卒業したら。実家に戻る気なんてねぇだろ」 「珍しいな、向原がそう言うこと聞くの」 「悪いか」 「悪くはないけど」  悪くはないけど。内心で繰り返して、笑う。それは、あの春の日の問答の続きなのかとどこかおかしく思いながら。 「向原が聞かないのを良いことに、俺が甘えていただけだしな」 「成瀬は、ちょっとは甘えたら良いよ。誰の前でも甘えようとしないから」 「そうやって」  甘やかすのが上手いから、とは何故か言えなかった。その代わりに、そうだな、と応じてみせる。いつもの調子で。 「大学は行くと思うけど。うーん、一人暮らしかな、当座は」  体面を気にするあの人たちは、それを望むだろうし。行って損はないだろうから、環境が許すなら、そうするつもりだ。 「俺が実家に居ると困るだろうし。この先も戻ることはないと思うよ。跡はどうかな、継がないかな。絢美に良い縁があればいいんだけど」  妹に押し付けることになるのは忍びないが、恐らくはそうなるだろうと思う。今のままでも簡単に想像のできる未来を語って見せれば、向原が微かに失笑した。

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