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パーフェクト・ワールド・レイン0-6

「それで、おまえはどうするんだよ」 「そうだな」  そうだな、現実的ではないことを考えるのは、難しい。 「どこかに行けたら、良いけどな」  何の縛りもない、ところへ。そんな場所が、この世界にあるとは到底思えないし、信じてもいないけれど。今、ここでなら、口にしても許されるような気がした。あるいは、許される、最後の期間。  この学園にいる間は、すべてを忘れていたい。誰にとっても、縛りのない場所であって欲しい。それは、多分に自分の為であったのだろうけれど。それが自分ならばできると。そう思っていた瞬間が、確かにあった。 「俺のところに、来たら良いのに」  冗談にしかならない軽さで紡がれたそれに、同じ軽さで返す。悔しいだなんて思いたくもない。嬉しいとも思いたくもない。 「向原には、もっと良い縁がいくらでもあるだろ。わざわざこんな外れを掴まなくても」  俺と違って、子どもを残すことも、未来を切り開くことも。すべてを望まれているくせに。すべてを与えられているくせに。

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