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パーフェクト・ワールド・エンド19-13
「成瀬」
呼びかけると、素直に成瀬が振り向いた。この小一時間だけで何度思ったかしれないが、本当に自分に対しての危機感を有していない。
茅野あたりは、それを「信頼」だと評すのかもしれないが、向原には到底そうは思えなかった。
最低限の加減だけで腹に一撃を加えると、なんの警戒もしていなかった身体は簡単に傾いだ。
抱きとめようとした茅野から奪うようにして引き寄せたついでに、同じ個所に膝を入れれば、完全に身体が沈む。
「おい、……さすがに、おまえ、それは乱暴すぎないか」
「不可抗力だろ、この場合」
腕のなかの身体は、先ほどまでまともそうな外面を保っていたことが信じられないほど熱いままだ。
「それとも、おまえ、これを外に出すつもりだったのか」
「まさか」
向原を一瞥した茅野が、溜息交じりに呟いた。
「遭遇したアルファが気の毒すぎる」
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