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パーフェクト・ワールド・エンド19-14
随分と昔、まだ中等部にいたころ、篠原にあきれ顔で言われたことがあった。おまえらの服がやたら入れ替わったりしてるのって、マーキングかなにかのつもりなのか。
そのときは、半分は無意識だった。けれど、そうだったのだろうと実感したし、納得もした。
隠されているはずなのに、時折感じる花のような甘い香り。オメガだと思っているわけではないだろうに、それでも、そういう目であの男を見る人間がいること。
気がついているくせに、知らないふりでやり過ごそうとする、あの男の傲慢さ。
そのどれもが、向原は気にくわなかった。
必要とあらば、他人の秘密を漁ることに罪悪感は覚えない。本来の持ち主のいない寮室で、小さく溜息を吐く。
目の前にあるのは、見つけ出した大量の薬だ。
――効かないって言ってたな。
ついこのあいだ、病院に行ってきたという話も聞いたばかりだ。ということは、あの時点で調子がよくはなかったわけだ。
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