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パーフェクト・ワールド・エンド19-19

「どういうことだ、向原」  榛名を帰らせてから、茅野が問いただすように声音を落とした。 「あいつが俺と出くわしたときに言ったんだよ。会いたくないやつばっかり、ってな」  それで察したらしい茅野がこめかみに手を当てた。物理的にも頭が痛そうな顔をしている。 「向原。頼むから、法に触れるようなことはしてくれるなよ」 「それは」  真剣な瞳を呆れたように見つめ返してから、答える。 「あいつ次第だろ」  本当に、そう思っている。今までのこともぜんぶそうだった。 「おまえに誓う」  重苦しい沈黙のあとで、茅野が言った。 「おまえに誓って、この寮にいるあいだはなにも起こさせない。だから、今を奪ってやるな」 「今?」 「なぁ、向原。俺はおまえの考えていることもわからなくはない。だから俺も篠原も、必要以上になにも言わなかった。でも、本当に今じゃなきゃそれは駄目なのか? ここを出てからじゃ駄目なのか」

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