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パーフェクト・ワールド・レインⅠ-2

「そう言えば、向原は? あいつ、最近、何してるの。俺、ここであんまり顔見ないんだけど」  止まりかけた指先の動きを誤魔化すように、決済印を手に取った。 「さぁ」  べつに何がどうと言うわけではないし、そもそもとして、篠原が言うほど、二人で行動をしているつもりもない。  ――それなのに、なんでなんだろうな。こいつにしても、茅野にしても。 「寮では普通に会うけど。気分じゃないだけだろ」 「気分じゃないねぇ」  含みのある言い方に、微かに眉を上げる。このくらいで効き目があるとは思ってもいないけれど。 「なんだ。まだアレを引きずってんのか」 「そう言うわけでもないけど」 「どうせ、また適当に流して終わらせたんだろ。いい加減にしとけよ、おまえのそれ」  適当に流した、と言われれば返す言葉はない。きまり悪さに黙り込むと、篠原は「それもな」と口を尖らせた。 「都合悪くなると、黙り込むだろ、おまえ。それか上滑りしそうなこと言って誤魔化すかの二択だし」 「……」 「俺はおまえのどこがそんなに立派に見えるのか、榛名に聞いてみたいわ、一回」

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