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パーフェクト・ワールド・レインⅠ-5
「それなら良かった。今日はどうしたの。こんな時間まで」
「それを言うなら、会長もじゃないですか。いつも遅くまでお仕事されてるんですか?」
「ちょうど、今の時期が忙しくてね。少し前までは他にも残ってるヤツもいたんだけど」
「お疲れ様です」
少女のような微笑を浮かべて、水城が労う。応じて、成瀬も笑みを刻む。他に誰も見ていないのに、とんだ茶番だとは思うが、いついかなる時でも仮面を捨てることができないのは、お互い様だ。
――それがオメガの性だと言うのなら、それまでではあるけれど。
「ねぇ、会長。会長は、僕がどうして、あんなことを言ったと思います?」
「あんなこと、って?」
「分かっているくせに。はぐらかすのがお好きなんですね」
首を傾げて、水城が笑みを深くする。
「僕が、なんで、オメガだってあの場で、わざわざ言ったと思います?」
「入学式の時の話かな。確かに驚きはしたけれど、きみは言った方が良いと判断したんだろう?」
自分にとって都合の良いことが起こると、そう。成瀬から見た水城春弥はそう言う人間だ。合理的で、上昇志向の強い人種。
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