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パーフェクト・ワールド・レインⅠ-11
「茅野さん。成瀬さんも、ちょうど良かった」
「どうかしたのか?」
「どうかしたって、わけじゃないんですけど。ちょっと、良いですか」
どことなく背後を気にしている様子に、行人に聞かれたくないことだったのかなと当たりが付いた。
――行人も、水城の件で結構、大変だろうしな。
「榛名が、一ヵ月ほど前に寮の鍵を失くしたのって覚えてます?」
「榛名が? あぁ、そう言えば。あの日か」
「あの日?」
「ほら、あれだ。おまえが俺の説得を邪魔した日だ。ミスコンをおまえが買って出た」
「あぁ。食堂で忘れたんだ? 行人。それで一人で戻ってきたら、可哀そうにおまえに捉ったと」
「言うに事欠いて可哀そうと来たか。……いや、まぁ、だが、そうだな。俺が捉まえた所為ですぐに鍵を取りに行けなかったのなら、悪いことをしたか。どうした? また鍵でも無くしたか?」
一度目の責任は俺にも多少なりともあるしな、正直に申告すればそんなに怒らないぞ、と。続けた茅野に、皓太が「そう言うわけでもないんですけど」と苦笑した。
「実はこの間、榛名が変なこと言ってたんですよ。変なことと言うか、妙なことと言うか」
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