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パーフェクト・ワールド・レインⅠ-12
「妙なこと?」
「俺が戻ってもないのに、寮室に戻ってきたかって。自分の机の引き出し触りながら」
その言葉に、成瀬は茅野と思わず顔を見合わせた。
「それが本当だったら、穏やかじゃないな。もしなんだったら、鍵の掛け替えもできるぞ。……まぁ、実費にはなるだろうが」
「榛名は気にしてないって言い張るんですけどね。そうだな、俺の負担でそうしようかな。あの、茅野さん」
「なんだ?」
「そう言うことって、間々あるんですか?」
きょとんと見上げられて、茅野が「あぁ」と僅かに言葉を濁した。まぁ、間々あるとは言いたくないだろうし、思いたくもないけれど。
「なくはないよ。と言っても、他の寮生が入り込んで、と言うことはあまりないけど」
「それも残念なことに、例がないわけではないんだがな。まぁ、いろんな生徒がいるからな、良くも悪くも」
「どちらにせよ、寮の部屋くらい落ち着ける場所であるべきだし。そう言う意味では、皓太の言う通り鍵の付け替えで安心が買えるなら安いかもな」
それもそうだね、と納得した様子の皓太に、手続きは点呼の後に教えてやる、と茅野が応じている。その会話を流すように聞きながら、考える。
――いや、まさかな。
ふと過った疑念を考え過ぎだと、頭の隅に押し流す。階段の踊り場で皓太と別れた途端、茅野が不意に真顔になった。
「おまえが今、思ったことを当ててやろうか」
「遠慮する」
「まぁ、そう言うな。共有するに越したことはないだろう」
そう言って、茅野が声を潜めた。
「水城の一派の仕業だと思っただろう」
真面目な瞳を見つめ返して、成瀬は小さく微笑んだ。
「そうじゃなければ良いと、思ってたところだよ」
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