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パーフェクト・ワールド・レインⅡ-2
「その前に、持って行ってやるよ、これ」
風紀に持っていくはずだったらしいそれを提示すると、篠原が微かに眉を寄せた。
「……喧嘩しに行く、の間違いじゃねぇだろうな」
「なんだ。おまえの耳にも入ってんのか」
「そりゃ、まぁ、ウチの寮は、アレだし。でも、出所が風紀だとは限らねぇだろ」
「違ったら、おまえのところだな、じゃあ」
「止めろって、マジで。おまえにまで乗り込んでこられたら、さすがに長峰も切れると思うぞー」
楓寮の寮長の名前をわざわざ出してきた篠原の牽制に、溜息一つで言葉を継ぐ。
「てめぇのところの一年くらい、しっかり管理しとけよって話だろうが」
「それはさすがに、俺らが言えた台詞でもないとは思うぞ。元はと言えば、成瀬が放ってるからだろ。あいつがどう考えてんのかは知らねぇけど」
「なんでもかんでも、あいつの所為にしてやるなよ。面倒見て、仕来りを教え込むのは寮の役目じゃなかったか」
篠原の言うことも分からなくはないけれど。ある意味でここまであの一年の存在感が増しているのは、楓寮が抑えるどころか、助長するような体制を取っているからに他ならない。
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