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パーフェクト・ワールド・レインⅡ-3
「それもそうだけど。それでも、あいつがやろうと思えばできるだろ。そうじゃなかったら、何のためにあいつはこの面倒な場所に座ってんだ」
「何を好き好んで厄介ごとばかりを引き受けてるのかと言うところには同意する」
生徒会長なんて面倒な仕事をわざわざ引き受ける心理が、向原には今一つ良く分からない。成瀬がやっているから、と言うだけで生徒会に所属して厄介ごとを引き受けている自分が言えた台詞ではないと分かってはいるが。
「と言うか、俺も気にはしてんだって。それで、この間、つい、あいつをすっ飛ばして皓太に忠告したんだけど。余計なお世話だって言わんばかりだったし」
「だろうな」
成瀬の一年に対する過保護ぶりは群を抜いている。。それも今更、と言うか、自分が何を言ったところで変わるわけはないと分かっているから、口は出さないだけだが。
「一瞬、追い出す気じゃねぇだろうなとも疑ったんだけど、さすがにあいつはしねぇだろうし、それは」
「病的な平和主義の平等主義者だからな」
篠原のぼやきにおざなりに応じて、そのまま外に出る。
誰よりも優れたアルファであるくせに、アルファでもベータでもオメガでも誰にでも分け隔てなく。。誰でもが幸せに過ごせる学園を、と。衒いなく言ってみせる生徒会長。
――それが、この学園における成瀬の姿だった。
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