165 / 1144

パーフェクト・ワールド・レインⅡ-4

 風紀委員会室の扉の傍らには、相も変わらず時代錯誤な木の看板が掲げられている。  陵学園の伝統だ、風紀の伝統だ、向原には何の興味もない。恐らく、中にいる男もそうだろうが。  無言でドアを開けた先で、中にいた男は愉しそうに口角を釣り上げた。 「よぉ、珍しいな」 「仕事だ、仕事。おまえら、また無駄に書類、こっちに上げてきてるだろ」  部屋の一番奥。風紀委員長の椅子に踏ん反り替えっていた男が手を差し出した。その手を無視して決裁書を机の上に降らせてやる。  本尾が笑って小さく手を振る。それだけで室内にいた数人の風紀委員が退室していく。  相変わらず、体育会系を通り越して、軍隊みたいな教育を施しているとも思うが、それも別にどうでも良いとは言えばどうでも良いことだ。自分たちに関係してこないのなら、何も。 「そろそろおまえか成瀬が来ると思った。おまえのとこの一年、えらく怖がってたからな」 「くだらない理由で威嚇してやるな、毎回」 「くだらなくはねぇだろ、くだらなくは。そもそも、おまえも俺に話があったんじゃないのか」  そうでもなければ来ないだろう、と続けた本尾が、見るともなしに書類の束を捲っている。

ともだちにシェアしよう!