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パーフェクト・ワールド・レインⅡ-6
「あいつの噂なんて、今更だとは思うけどな」
どこから出てきたのだと言いたくなるような噂が蔓延るのは、この学園の有名人であれば仕方がない一面もある。ただ。
「それでも、おまえも気にしてるじゃねぇか。突拍子のない噂だから余計に面白がられてるんだろ。まぁ、あの顔だ。想像する奴がいてもおかしくねぇよな」
突拍子もない噂。本尾もそう思っているのか、今はまだ。
「真実はどうあれ、真実かどうか実証しようとする奴が出ても不思議じゃねぇし?」
「本尾」
「なんだ? 向原」
にこりと微笑んで、向原は掌を机に打ち落とした。
「殺すぞ」
変わらない表情のまま向原を見上げていた本尾が、ふっと小さく息を吐いた。
「変わらねぇな、おまえこそ」
向原が数分前に言った台詞を当てこするように笑う。
「いや、この数年は、か。あいつの何がそんなに良いのか、俺には全く分からねぇな」
だろうな、とは思った。こいつに分かるわけがない。
「けど、まぁ、安心しろよ。信じる信じないはおまえの勝手だが、今回のそれはウチじゃない」
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