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パーフェクト・ワールド・レインⅡ-11
「おまえ、あれがアルファに見えんの?」
陵学園に入学する前から見知っていた学友に、一度、向原は聞いてみたことがある。中等部に入学して一月経ったか経たないかくらいのころの話だ。
当時の同室者でもあった篠原は、その問いに、若干答えにくそうに眉を下げた。
「まぁ、アルファかベータかって言われたら、俺にはアルファに見えるけど。でも」
「でも、なんだよ」
「あんまりその話、成瀬にしない方が良いぞ。あいつ、すげぇガチガチの……なんていうのかな、まぁ、とりあえず、あれだ。第二の性の話がすげぇ嫌いみたい」
「すげぇ嫌いも何も、……普通に過ごしてたら出てくる話題だろ」
「普通はそうだけど。でも、向原が言うのも珍しいとは思ったけど。だって、おまえ、そう言う興味持たないじゃん」
指摘されて、確かにそれはそうだな、と向原は認めた。誰がアルファだ、オメガだ。そんなどうでも良いことに気を取られたことは今までなかった。
――まぁ、でも、そうだな。
周囲の人間が揃ってアルファだと言う人間が自分は「そう」思えなかったから疑問を抱いただけだ、と納得させる。
「やっぱりアルファの上位種ってヤツだから気になんの? おまえもだもんなぁ。さすがにそこは感じるものがあったりして」
アルファどころか、アルファの上位種に見えるのか。こいつもアルファだろうに。同族の見分けくらい付かないのかと半ば呆れながら、頷く。べつに、あいつがオメガじゃないか、だなんて。わざわざ言うようなことでもない。
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