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パーフェクト・ワールド・レインⅡ-13
「おまえのせいで、……っ、いや、なんでもない」
何でもないと言うことはないだろう。それでも言葉にしなかったのが、最後の一線だったと言うなら、あまりにお粗末だ。馬鹿にする代わりに笑う。
「俺のせいだって言うなら、責任でも取ってやろうか」
それはそれで面白いかもしれない、とは思った。
「噛んでやろうか。面倒事から解放されるだろ、それで」
運命だろうが、なかろうが、アルファがオメガの項を噛めばつがいの契約は成立する。そうすれば、オメガは無差別にアルファを誘うフェロモンを発することはなくなる。
「ふざけんなよ」
敵意をあらわにした声が響く。
「そうやって、おまえらアルファは、オメガを……」
「馬鹿にして見下してるって?」
オメガは下等種だとされる存在だ。性を象徴する生き物。
「一番そう思ってるのはおまえだろ。だから、アルファだ、なんて顔してるんだろうが」
そして、その程度に周囲はころりと騙されるのだ。その程度のものに何の意味があるのか、と。向原自身は思っている。けれど。
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