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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 0-2
五年以上同じ寮で寝食をともにしていれば、嫌が応にも人となりは見えてくる。だから、まぁ、なにごともなかった顔で開き直って姿を現すだろうなとは踏んでいた。
が、さすがにここまでは予想していなかった。
なにひとつ悪びれていない、しらっとした顔をまじまじと見つめてから、茅野は呻いた。
「悪いが、もう一回言ってくれるか、成瀬」
「だから、うなじ噛んでくれないって。そう言ったんだけど」
「……撤回してほしいから、もう一回言ってくれと言ったつもりだったんだが」
簡単な話だろ、といわんばかりの調子に、思わずこめかみを押さえてしまった。頭が痛い。
「茅野にそこまでデメリットはないと思うんだけどな。べつにだから相手しろとまでは言わないし、卒業したら終わりにしてくれていい。それに、そうしたら、少なくとも寮の中で問題が起きることはない。これ、メリットだろ」
「それが、あの一年を叩くことの条件だという話か」
「まぁ、そうとも言えるかな。茅野にとっての一番のメリットはそっちかも」
「おまえのメリットはなんなんだ」
「わかるだろ」
にこ、と作り物のような微笑を成瀬は浮かべてみせた。
「面倒ごとはごめんだ。誰彼構わずフェロモンに反応されたくない」
「そこで、嘘でも俺のことが好きだとかなんだとか言わないあたり、おまえだな」
「言われたかった? おまえ、この顔好きだもんな」
「そういうことじゃない」
苦々しく否定して、茅野は頭を振った。
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