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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 0-5
「篠原に言っても俺と似たり寄ったりのことしか言わないと思うぞ。諦めろ。おまえはおまえの言うおまえなんかのことを大事に思っている人間のために、もう少しくらい自分を大事に扱ってやれ」
「大事に?」
「そうだ」
らしくない馬鹿にしたような態度だったが、めげずに言い諭す。
「おまえにはおまえの都合があることはわかる。俺にはわからないだろうとおまえが切り捨てていることもわかる。でもな、おまえの都合に振り回される人間のことも思いやってやれ」
向原や篠原、柏木といった同級生もそうだし、成瀬がかわいがっている一年生だってそうだ。次々に茅野の頭には顔が思い浮かぶのに、当人にとってはそうでないらしい。
抑えきれなかった苛立ちを自覚しながら、茅野は小さく息を吐いた。ここから先はあまり引き合いに出したくなかったのだが、しかたがない。
「おまえの思考回路が正常じゃなかったから出た言葉だと信じたいが、なかなかだったぞ」
言った瞬間、微笑を刻んでいた瞳の温度が下がったのはわかったが、かまわずに続ける。
「俺も最初からすべてを聞いていたわけじゃないがな、自分のことを好きだと承知している相手に『死んでやる』と言うのも最悪な脅し方だと思うし、『誰でもいいから相手を探す』という捨て鉢な言動もなかなかに最悪だった。しかもおまえ本気だっただろう」
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