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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 0-7

 なにを考えているのかわからない顔で沈黙を決め込んでいる男に向かって、滾々と伝える。 「大切にしている、というのは、そういうことだと俺は思うが」 「……」 「強いだとか、弱いだとか、アルファだとか、オメガだとか、そういったことではなく。おまえはこれもアルファの俺だから言える詭弁だと切り捨てるのかもしれないが、そういった理由だけで庇うわけじゃないだろう。大事な人間だから、庇ってやりたいし、守ってやりたいと思うんだろう」  なんでこんな小学生への情操教育のようなことを同い年の男にしなければならないのか。そんなふうに呆れながらも、茅野は言い諭した。  なぜ、そんなふうな考え方しかできなくなっているのか、という同情はしたくなかった。自分たちは、友人だ。成瀬がどう思っていようが、アルファだろうが、オメガだろうが、関係はない。 「それは、そんなにおかしいことなのか」  そんなことはない場所であってほしいとも思っている。そうして、もともと、そう言っていたのは、――その世界を実現させようとしていたのは、成瀬だったはずだった。そのすべてが嘘だったとは思えない。 「それをわからないで切り捨てるのは、さすがにどうかと俺は思うぞ」  じっとこちらを見つめていた視線が逸れたのが合図だった。畳みかけるようにして、通告する。 「言い返せないなら、ちゃんと向原と話せ」  茅野は、成瀬たちとつくり上げてきた、ここが好きだ。陵学園も好きだし、櫻寮も好きだが、何年もともに過ごしてきた友人たちが好きだ。  だから、自分の好きな人間の望むかたちであってほしい。それ以外の人間の望みなど、どうでもいい。  これは、そのための最低条件だ。茅野はそう思っているし、成瀬もきっとわかっている。 「話はぜんぶそれからだ」

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