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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 1-1
[1]
――俺は、オメガはひとりでは生きられない、なんてことはないと思う。
――でも、信頼できるアルファがいるなら。ずっと一緒にいたいと行人が思えるようなアルファがいるなら、つがいになったほうが、きっとずっと生きやすい。
――幸せになれる。
――逃げたわけでも、負けたわけでもない。運命だったって、だけだ。
あの夜、成瀬は、それが当然なのだという顔でほほえんでいた。アルファの、王者の、いつもの顔で。
だからわかったのだ。この人は、そのあたりまえを――オメガが幸せになれるという当然を掴む気などさらさらないのだということを。
「なにしてんの、おまえ」
帰りを待ちわびていた同室者にあきれ顔で指摘されて、行人はぴたりと足を止めた。
「いや、その……」
夜の点呼が終わってから、思い立ったように高藤が「茅野に用事がある」と言って出ていったとき、自分は机に向かっていた。
とはいえ、もともと宿題はまったく進んでいなかったのだ。その上、行ったきりなかなか戻ってこないのが気になってしまって、なけなしの集中力は完全に消え失せた。
その結果、落ち着きなく部屋の中をぐるぐると歩き回っていたというだけで。
「熊かよ」
思わずというふうに笑われて、行人はむっと唇を尖らせた。そうしてから、「あ」と詰め寄る。寮に帰ってからずっと張りつめていたものが、ほんの少し緩んだように感じながら。
「茅野さん、なんか言ってた?」
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