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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 1-2

「あー……、いや、ちょっと話せなかった」 「なんで?」 「いや、忙しそうだったし」  それならもっと早くに戻ってくるだろ、と疑ってしまったのだが、もしかすると、茅野の手が空くまで待ってみたが、結局、空かなかったのかもしれない。   そう思い直して、「そうか」と行人は自身を納得させた。けれど、茅野が忙しそうだったと聞くと、あまりいい感じがしない。  高藤から離れて、中途半端に開きっぱなしだった教科書の前に座ったものの、眉間に刻まれたしわは取れないし、手も動かない。その様を見かねたのか、高藤がどこか阿るように話しかけてきた。 「茅野さんがおまえを呼びに来たときはなにごとかと思ったけど」 「……うん」 「まぁ、でも、そこまで心配することでもないのかも」  楽観的、と言ってしまえるようなそれに、思わず顔を上げる。高藤はしかたないというような笑みを浮かべていた。心配じゃないのかよ、とはさすがに言えない。言葉に詰まった行人を宥めるようにして高藤は言葉を紡いだ。 「おまえのときもなんだかんだでなんとかなったし。あの人たちは、きっとどうにでもするよ」 「でも……」 「どうにでもしないと、どうにもならないしね」

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