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パーフェクト・ワールド・レインⅢ-1

[3]  遊びに来ていた後輩がいなくなり、五階の談話室がふっと静かになる。四階以降の階と違い、元々の在寮生の人数が少ないおかげで、このフロアは基本的に人の気配が少ない。  気を張る必要性が減ると言う点では、特別フロアに入寮することができて良かったと思う。その代わり、アルファの巣窟でもあるけれど。  自分も部屋に戻ろうかと立ち上がりかけたのとほぼ同時に、近づいてくる気配に気が付いて座り直す。その影が予想通りの人物だったことを確信して、成瀬は笑みを浮かべた。 「あれ、なんか久しぶり」 「久しぶりってほどでもないだろ」  クラスも同じならば、生徒会も一緒に活動している。おまけに寮も同じだ。そこまで揃って、確かに久しぶりに顔を見たと言うことはないな、と思って、けれど、と、思い直す。 「向原が全然、俺の部屋に顔を出さないからだ」  そう思うなら、自分が向かえば良いだけの話であることも分かっているのだけれど。  談話室に足は踏み入れたくせに、腰を落ち着けようとはしないまま、向原はさらりと受け流した。 「べつに。そう言う気分だっただけ」 「そう言う……俺に不満のある気分?」  にこりと微笑んだ先で、向原も微かに笑った。 「どうかしたのか?」

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