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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 1-10

 観衆の騒音が、ぴたりと消える。その視線は一様に成瀬に注がれていた。行人も同じだった。目が吸い寄せられる。  中等部に入ってすぐのころから行人は成瀬を追いかけ続けていた。ずっと見ていた。  けれど、成瀬が特定の誰かを糾弾するようなところは、一度も見たことがなかった。  今この瞬間までは。 「俺を、落としたいんだろ」  まっすぐに水城を見据えたまま、彼は言い放った。アルファの顔で。 「その気があるなら、リコールでもなんでもすればい」  誰かが息を呑んだ音が妙に大きく響いた。リコール。  ――リコールって……。 「俺に勝ったら、おまえの好きにしたらいい。でもな、それまでは、ここは俺の学園だ」 「それまでは、ですか」  その顔を見るまで、行人はまた泣いてみせるんだろうと思っていた。先ほどのように。あるいは、もっと前。廊下で自分と揉めたとき、仲裁に入った成瀬を前にしたときのように。  そうして被害者ぶって、アルファに守られるのだろう、と。  けれど、水城は選ばなかった。花のような笑顔とは違う、不敵な笑みが天使と評されている顔に乗る。 「いいですよ。受けて立ちましょうか。あなたが終焉を望むなら」  背後に控えていた同級生のアルファが慌てて止めようとするのを視線ひとつで受け流して、水城ははっきりと宣言する。 「あなたが僕を嫌いなように、僕もあなたが嫌いです」

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