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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 1-11

 堂々としたそれに、静かに周囲がざわめき始めていた。けれど、渦中のふたりは変わらなかった。 「それが、僕があなたを潰したい理由のすべてです。本当に、心の底から、大嫌いだ」 「そこまで思ってもらえるなんて、光栄だな」  場違いなほど穏やかに成瀬がほほえむ。 「きみが正当な手続きさえ踏むのなら、俺はなにも文句はないよ。好きにしたらいい」 「そうですか。そうですね、そうさせてもらいます」  棘のある早口で言い切るなり、水城は行人たちの横を通って寮のほうへと帰っていく。そのあとを慌てて取り巻きの幾人かが追いかけていった。ハルちゃんと戸惑った声で呼びながら。  感情的で攻撃的な水城の姿に驚いたらしいことは明白だった。勝気な側面を持っていることは知っていたが、水城はいつもそれをきれいに隠していた。  隠すのをやめたという事実が、現状への宣戦布告だと知らしめているようで。  成瀬は、どうするつもりなのだろうか。言葉にできない不安ばかりが増していくのを感じながら、行人は声をかけようとした。 「あ……」  けれど、できなかった。中途半端に浮かしかけた指が下に下がっていく。  まっすぐに前を向いたまま、成瀬はひとり校舎へと歩いていく。ざわめきも、視線も、なにもかも気にせずに。  その背中を衆目の中から見送りながら、行人は思い知っていた。  自分と同じはずなんて、最初からなかったのだ。  やっぱり、この人はたったひとりの「王」だった。この学園の。行人たちの、王だった。

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