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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 1-12

「大丈夫?」  その声に、行人は校舎に張り付いていた視線を引きはがした。言葉どおりの気遣うような表情で、高藤は自分を見ていた。その気遣いの対象に成瀬が含まれていないことは明白だった。  ――あんまり、あの人を舐めないほうがいい。  昨日の夜、高藤が言っていたことだ。弱音を吐くタイミングを飲み込ませたのではないかと思っていた。でも、違ったのかもしれない。 「おまえ、知ってたのか?」 「知ってたって……、いや、昨日は本当に話してないよ、成瀬さんとは」  険のある調子を宥めるようにさっと否定してから、高藤が小声で続ける。 「ただ、まぁ、昨日言ったとおりで、あのまま引っ込む人じゃないだろうなぁとは思ってたから。となると、どこかで派手にぶちかますだろうなとは」 「だからずっと黙って見てたって?」 「いや、だからそれこそ昨日言ったとおりで、俺が口出すとあの人絶対……」  中途半端に言葉を途切れさせた高藤の視線を追って、行人も振り返る。そうして「あ」と叫ぶ。 「茅野さん!」  ギャラリーの奥からひょいと姿を現した長身が、指をささんばかりの行人の勢いに、苦笑いのまま進み出てきた。 「まったく、どいつもこいつも朝から元気なことだな」

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