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パーフェクト・ワールド・レインⅢ-3

「俺が押さえつけて良いのかどうか、実は少し迷ってる」  だから結局、篠原にも茅野にも言えなかったことを、こうして零してしまっている。 「もし、ここが変わるとしても、それが自然の流れなんだったら、……俺がどうのこうの口を出すのもおかしいような気もするし」  考え方は違うと思う。理解できないとも思っている。けれど、それだけで、一掃していいとも思えなくなっている。 「任期が終わって以降のことを、俺がコントロールするようなことでもないとも思う」 「いつものおまえだったら、迷わずに抑え込むだろ。おまえが卒業した後のことも、――と言うか、あの一年のことを考えて、そう言うだろ」  迷走している自覚のある話を黙って聞いていた向原が、小さく息を吐いて、声を和らげる。はっきりとした変化ではなかったけれど、それでも成瀬には分かる。 「なのに、どうした」  言葉にしようとすると、やはり抵抗がある。その感覚に、つまりそう言うことなのだなとも再認する。認めたくはないが、引っかかるところは、そこで。そこでしかない。 「あの子は、オメガだから」  自分が、自分に都合の良い学園を創り上げたように。あの子も自分にとって都合の良い学園を創り上げたいと思っているのだろう。

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