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パーフェクト・ワールド・レインⅢ-4
ふっと周囲を見渡して向原が眉をしかめた。
「ちょっと来い」
「あそこでするような話でもないだろ」
久しぶりに足を踏み入れた向原の部屋は、相変わらずの物の少なさだった。殺風景なのは自分も良い勝負だとは思うが、性格が出るなとも感じる。対照的な例が茅野の部屋で、あそこは雑然としているのに妙に温かみがある。
――ここはここで落ち着くけどな、俺は。
捻くれている自覚があるから、余計。茅野のそれは、居心地が良すぎて座りが悪い。
「誰かいるかどうかくらいは気にしてる」
ドアを閉めるなり説教じみたことを言われて、苦笑する。気にしてくれているのは分かるし、有り難いとも思うが、その反面、そんなに気にする必要はないと反発したくなることがある。
「まぁ、でも、そうだな。ここの方が落ち着くか」
その反発を呑み込むのは、向原に対してどうのと言うのではなく、自分が気にしていると思われたくないからで。物わかりの良いことを言うのも、本質から話を逸らして誤魔化すのも、結局全部、自分の為だ。
「最近は学園中が浮ついてるから。言葉には気を付けないと」
「成瀬」
「茅野まで呼び出されたらしいから。学内のことなのに。と言うか、あれか。日中が荒れてるから、せめて寮の中だけでも真面に保てってことなんだろうけど」
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