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パーフェクト・ワールド・レインⅢ-5
「成瀬」
言い繕っていたそれを遮って、向原が続ける。
「おまえは俺に話したいことがあったんじゃないのか」
――俺よりずっと、良いヤツなんだよな。なんでか怖がられているだけで。
「そもそもとして、おまえとあいつは違うだろう」
「違わない。俺だって自分の勝手でここを作り替えようとしただけだ」
反射のように言い返すと、向原が呆れ切った風に溜息を零した。
「みささぎ祭が終わってからこっち、迷走していた理由がそれか」
「迷走、って」
「篠原も気にはしてたけどな。生徒会室に籠ってばっかりで、何を考えてんのか分からねぇって」
「そこまで気にさせてるつもりはなかったんだけど」
気が付かれているとは思っていたが、迷惑をかけるほど、露見させていたつもりはなかった。
「馬鹿馬鹿しい」
言い訳もぜんぶ切り捨てて、向原が言う。
「やりたいようにやれよ」
なんでもないことのように、そう。
「俺が手伝ってやるって言っただろ」
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