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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 1-14

「楓寮って……、ちょ、茅野先輩!」  荻原の呼びかけもむなしく、またあとでなという一言を残して茅野も校舎に向かっていく。  その背中を見送ってから、ぼそりと四谷が呟いた。 「完全な言い逃げだったね、寮長」 「いや、言い逃げっていうか……」  そこで言葉を切って、荻原が通り過ぎていく生徒たちを見やった。 「聞かせてたよね、絶対」  荻原の言ったことを事実だと示すかのごとく、「楓寮って」、「ハルちゃんのことだよ」といった囁きがさざ波のように広がっているのがわかった。  あぁ、もう、と荻原が唸って空を見上げた。 「なんかめちゃくちゃ面倒なことに巻き込まれてる気がするんだけど、俺」 「しかたないよ」  どうにでもなれ、というように四谷が肩をすくめた。 「櫻寮に配属されちゃってるからね、俺たち」

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