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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 1-15
「まぁ、ねぇ……って、榛名ちゃんどうかした?」
最後まで残っていた生徒たちも、ばらばらと校舎に入っていく。その人波を見つめ続けていた行人が気にかかったらしい荻原に声をかけられて、「なんでもない」と応じようとした瞬間。
視界に入った人物の影に、行人はとっさに走り出した。
「榛名?」
「悪い、ちょっと抜ける」
できたら始業までには教室に戻りたいとは思っているけれど。戸惑いを隠せていない高藤の声に、そうとだけ返事をして、どんどんと小さくなっていく人影を追いかける。
寮に帰ってから話を聞いてもよかったのかもしれない。冷静に考えれば違う案も出てきたとは思うのだが、気になったという欲求が勝ってしまったのだ。
「っ、向原先輩!」
人気のない校舎裏まで追いかけたところで呼びかけると、ゆっくりと向原が振り返った。正直、相手にされないんじゃないかと思っていたので、少しだけほっとした。
「あの……」
聞きたいことはあったのだが、なにからどう言えばいいのかわからなくて、行人は口ごもった。きっとこの先輩はそういう態度は嫌いだろうとはわかるから、余計に焦ってしまう。
けれど意外にも向原は苛立ったふうでもなく、静かに待っていてくれた。
――怖いだけの人じゃない、か。
色眼鏡で判断するなというように、何度も言われたことだ。それは、同室者だったり、成瀬だったり、茅野だったりしたわけだけれど。
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