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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 1-17
見かねたのか、向原がまたひとつ溜息を吐いた。そうしてから口を開く。どこか投げやりに。
「勝手に安心でもなんでもしとけ」
「え?」
「なにがどうなろうと、あいつはあいつだってだけだ」
ここまで言えば十分だろうと言いたげな雰囲気に、気がついたときには行人は首を縦に振ってしまっていた。
いまさらながら本尾先輩のことを聞きたかったのだと思い至ったが、そのときにはもう向原はいなくなってしまっていたし、それに――。
「……ぜんぶ、それが答えだってことだよな」
さきほど向原が言ったことを、行人は反芻していた。
あいつは、あいつ。
そう言い切れるのは、あの人が誰にも負けない――第二の性に影響されることのない人生を歩めるアルファだからかもしれないし、成瀬はそう思うのだろうと思う。
彼のすべてをわかるとは口が裂けても言えないが、同じオメガの自分だからこそ、わかる部分もあると思っている。
でも。
「すごいよな」
ぽそりとひとりごちてしまった。そんなふうに言い切ってしまえることは、純粋にすごいと思ってしまった。
そうして、羨ましいな、とも。
だって、自分は、あんなふうに言い切ることも、信じることも、できなかった。
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