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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 2-2

 近寄ってきた篠原に向かって、成瀬はつくり慣れた笑みを浮かべた。悪だくみと言ってしまうと語弊はあるが、こうして生徒会室に三人こもっていると、なにもなかったころに戻ったようだった。  ――まぁ、なにもなかった、じゃなくて、なにもないふりをしてただけ、だけどな、  成瀬自身にしろ、向原にしろ。あるいは、その自分たちを見ていた篠原にしろ。特に三年生になってからの数か月は「なにもないふり」は顕著だったはずだ。 「その前に聞きたいんだけど、そんなに荒れてるんだ? 楓寮」 「『ハルちゃん』がな」  苦り切ったふうに篠原がぼやく。「まぁ、それといつものあいつの取り巻きも、か。おまえ公衆の面前でいじめたんだって?」 「人聞きが悪いな。公衆の面前で不必要に突っかかってきたのは向こうだ。俺としては、会長としてこの学園の決まりを教示しただけのつもりだったんだけど」  そこで言葉を区切って、成瀬はほほえんだ。 「それをいじめだと取るなら、しかたないな」 「どんな化かし合いだ」 「あぁ、まぁ、そう言ってもいいかも。天使の皮が一枚はがれた」  化かし合いという表現に、笑って頷く。たしかにあれは化かし合いだった。

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