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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 2-6

「あたりまえだろ」  心配されるようなことはなにひとつとしてない。一蹴して、成瀬は話を元に戻した。 「それで、利害の一致の話だけど」  かろうじて、この点だけは一致したというほうが正確かもしれないが。同意を得たことは事実だ。 「篠原も前に言ってただろ? みささぎ祭が終わったころか。水城を追い出すつもりなのかって」 「あぁ、おまえが似非臭い顔で追い出すつもりはないって言ってたやつな」 「似非臭いって。もちろん、今も追い出すつもりはないよ。俺がしていいとも思ってないし」  その代わり、となんでもない調子で続ける。 「この学園の決まりを教え込むのは、俺の役割かなって。まぁ、嫌だって言うなら、多少は強引になるかもしれないけど」  オメガもアルファも、ベータも、第二の性はなにも関係のない世界。そうであるはずのここに、オメガは要らないのだ。 「しかたない」  同じ言葉を成瀬は繰り返した。 「あいつは毒だ」  それもきっと、本当は一番最初に顔を合わせたときからわかっていたことだった。できることなら穏便に済ませたいと思っていたのも本当だ。  けれど。 「黙って見ているわけにもいかないだろ。ここは俺の学園だ」  少なくとも、今はまだ。  言い切ってから、成瀬は向原のほうを窺った。もとから口数の多い男ではないが、本当に必要最低限しか喋ろうとしない。  その代わり、以前よりもはっきりと視線を感じる。その視線が言葉よりもなによりも明確に自分に告げていた。  許しているわけではないのだ、と。

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