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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 2-8

 その勢いのまま近づいてきた長峰が、バンと机に手を叩きつける。ざわついていた教室が一瞬静まり返った。 「おまえ、そんなにうちに不満があるのかよ」  怒鳴りたいのはなんとか抑えたといわんばかりだ。長峰のうしろで苦笑いを浮かべている茅野に目を向けると、おまえに任せたというように首を振られてしまった。どうせ篠原も同じ心づもりに違いない。  しかたなく、長峰に向かって問いかける。 「うちって、楓寮? それとも、水城?」 「どっちもに決まってんだろ。そもそも水城がなにしたって言うんだよ。朝もなにもあんなところで言い負かす必要なかっただろ」  寮に帰ってきて泣いてたんだぞ、とすごまれて、成瀬は演技ではなく首をひねった。 「そんなふうには見えなかったけど」  あれだけの啖呵を切っておいて、よく寮の中でもとの「ハルちゃん」を演じようとしたなとは思ったけれど。  あの場にいなかった連中はともかくとして、行動を共にしていた取り巻きたちはその変わり身に驚かなかったのだろうか。 「そもそもとして、先に喧嘩売ってきたのはあっちなんだけどな」 「聞いた。おまえのためだと思ったけど、失礼だったみたいだってな。ちょっと考えが足りなかったかもしれないけど一年だぞ? あそこまで言う必要あるか?」  そこで成瀬は少しだけ困ったふうに笑ってみせた。 「確信犯じゃなかったら言わないけど」

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