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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 3-5

「だからなんなんだよ、証拠って」 「えー……、聞かないほうがいいと思うけどなぁ」  相手は「どういう意味だ」と色めきだっていたが、聞かないほうがいいだろうなぁと皓太も思う。たぶん夢が崩れる。  フロア長は荻原なのだから、とすべてを丸投げしようかとも思ったのだが、さすがに放って帰るのは気の毒だ。そういったわけで談話室の入り口でやりとりを見守っていたのだが、四谷が小声で話しかけてきた。  四谷も四谷で、先に帰るのは忍びないと判断したらしい。 「そんなにすごいの?」 「まぁ、うん。谷戸たちは聞かないほうがいいと思うよ、俺も」  すごいは、まぁ、すごかった。これは言い逃れできないだろうな、という意味においても、よくそんな証拠を茅野が掴んできたなという点においても。  ――まぁ、たぶん茅野さんっていうか、向原さんだろうけど。一時期よく楓に出入りしてたみたいだし。  どうやったのか、というところは、自分の精神衛生上のためにも想像したくはないのだけれど。本当に用意周到というか、これだから敵に回したくないというか。  あいかわらず、だというか。

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