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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 3-6

「どうかした……って、なんだ、またか」 「美岡」  苦笑いとしか言いようがない声に振り返ると、声そのものの顔で美岡が、談話室の奥を見やっていた。 「荻原もかわいそうに。言いがかりっつうか、八つ当たりだろ、あれ」 「まぁ、だな」  自分が言うと、「これだから生徒会は」と言われるのが目に見えているので、当人たちには口にできないが。  美岡も美岡で荻原と同室だから、もしかすると愚痴を聞き及んでいるのかもしれない。 「もしかして結構聞こえてるの?」 「あ、四谷もいたんだ。結構どころじゃないよ。苑が大丈夫かなって俺の部屋叩いてきたから、それで」  様子を見に来た、ということらしい。廊下のほうに目をやると、ちらちらとドアから覗いている顔が見えた。何人かはこちらに近づいてきている。  その中に同室者の姿がないことにほっとはしたものの、このままいけば近いうちに二年のフロア長あたりが下りてきてしまうだろう。  荻原は宥めようと腐心しているが、話の論点は寮生委員会から生徒会の批判になっていて、まだまだ終わりそうにない。  ――でも、よかった。本当、榛名がいなくて。  いたら間違いなく騒ぎを大きくしたに違いない。あの同室者は、本当に昔から、なにをそこまでと言いたくなるほど、成瀬に対する批判を許さないのだ。それで何度小競り合いを起こしてきたことか。  皓太は榛名ほど盲目的ではないから、谷戸たちが言うことはわからなくもない。正直、成瀬があんなにはっきりと水城を煽るとは思っていなかった。同時に、水城があんなにわかりやすく乗るとも思っていなかったのだけれど。

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