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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 3-8

 非という言葉に谷戸が反応しかけたが、茅野は許さなかった。 「まぁ、もっと早くに認めていてくれたら、こんな大ごとにはならなかったんだがな。それから、ついでに、もうひとつ」  そこで茅野は、談話室の外にいた一年生も含めてぐるりと見渡した。 「なにも俺がハルちゃんを嫌いで、会長派の筆頭だから、寮生委員会会長の強権を発動して楓寮を貶めたわけではないからな」 「あの、……べつに、そんなふうに思っていたわけでは」 「もちろん成瀬もだからな。あいつもルールを守っている生徒を攻撃するようなことはしない。そういう意味で、あいつはまともな生徒会長だ」  いつもおおらかと言っていい態度の寮長の厳しい物言いに、談話室の空気はしんと静まり返っていた。 「おまえたちが知らないのも無理はないし、過去を知って、だからあいつを敬えとは言わんがな。おまえたちが中等部に入学した当初から安穏とした学園生活を過ごすことができたのは、成瀬がいたからだぞ」  今からすると信じられないかもしれないが、昔のここは荒れていたんだ。みささぎ祭の前だ。茅野にそんな話を聞いたことを、皓太は思い出していた。  俺たちの代をかわいそうだ、とそう言っていた。

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