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パーフェクト・ワールド・エンドⅡ 3-11

「点呼は、……なんだ。嵯峨はいないのか。しかたない、高藤」 「え? あ、はい」 「前フロア長のよしみでやっておいてくれ」 「え」 「ほら、そこらで見てる一年も、ちゃんと寮室に戻っておいてやれよ。ただでさえ遅くなってるんだ。せめて点呼がスムーズに終わるよう協力するように」  有無を言わせず押し付けてから、パンパンと手を叩く。 「はい、以上。解散」  解散と言った言葉どおり、颯爽と茅野は談話室を出て行ってしまった。名指しされた三人を連れて荻原もそのあとを追いかける。すれ違いざま、ごめんねと謝られて、問題ないと康太は首を横に振った。  べつにこのくらい、たいしたことではない。 「なんか、すごかったね」  元凶のいなくなった談話室で、ぽつりと四谷が呟いた。まだ余韻が残っているのか、誰も寮室に戻ろうとはしていない。 「たしかに、いつもの寮長っぽい感じじゃなかったけど。でも、まぁ、谷戸たちに問題もあったし……」 「じゃなくて」  美岡の言葉を遮ってから、取ってつけたように四谷が言い足す。「いや、そういうことでもあるんだけど」 「でも、それだけじゃなくてさ。この寮で会長を悪く言えば追い出すってあれだけはっきり言われちゃぁね。俺ら一年はなにも言えないでしょ。茅野先輩のことを慕ってる一年も多いし」

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