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パーフェクト・ワールド・レインⅢ-7
「珍しい、皓太じゃん」
篠原の声に教室の出入り口に視線を向ける。昼休みで人の出入りは自由とは言え、一年生が来るには敷居の高さは多少なりともあるのだろう。どこか落ち着かない様子の幼馴染みに、席から声をかける。
「どうかしたのか?」
ほっとした顔で近づいてはきたけれど、寮生委員会で茅野に急ぎの用事でもあったのかな、と見当を付けた。そうでもなければ、夜になれば寮で会うのに、わざわざ来ないだろう。
「茅野なら向原と一緒にどっか行ったけど」
急ぎなら戻ってきたら伝えようか、と付け加えると、皓太は僅かに首を振った。
「いや、その、……成瀬さんにだったんだけど」
「俺?」
「ちょっとだけ良いかな、今」
寮じゃしにくい話だった、と言うことなら、行人のことかな。
どこか調子の悪そうな横顔が脳裡に過る。本人はいつも通りのつもりなのだろうが、漏れ出ているそれに成瀬も気が付いていたし、同室者である皓太も気が付いていたのだろうけれど。
「外した方が良いか、俺」
篠原の提案を断って立ち上がる。
「大丈夫。ついでに外に行ってくる」
この教室内でもやりにくい話だろうから、と。それで良いか、と視線を向けると、皓太が小さく笑った。
その顔は昔から変わらないけれど、それと同じくしてこの年下の幼馴染みは、昔から年よりずっとしっかりしていて、成瀬を頼ることもあまりなかった。
だから、それをすると言うのは、よほど困ったと言うことなのだろうけれど。
――いやなタイミングだな、部屋の鍵のことと言い。
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